与太郎
「ご隠居〜!すげぇバンド見つけたッスよ!」
ご隠居
「ほぉ、今度はどんなバンドですか?」
与太郎
「“可愛いメイドさん”ッス!」
ご隠居
「……また妙な翻訳をしましたね。まさか“PRETTY MAIDS”のことじゃないだろうね?」
与太郎
「そうッスそうッス!名前がもう“トールちゃん”か“ルコアさん”しか思い浮かばなくて!」
ご隠居
「お前は“北欧”ってだけで『小林さんちのメイドラゴン』に繋げすぎです。PRETTY MAIDSはデンマークのハードロックバンドで、80年代からずっと現役の重鎮ですよ」
与太郎
「そ、そうなんスか……てっきり秋葉原系かと」
ご隠居
「それで今回の“Jump The Gun”ってアルバムは、3年ぶりの新譜で、あのロジャー・グローヴァーがプロデュースしています。DEEP PURPLEのベーシストですね」
与太郎
「おぉ、紫つながりで“ルコアさん”来たこれ!」
ご隠居
「ルコアの話は置いといて。とにかくこのアルバム、北欧バンド特有の“冷たさ”より、むしろ土臭い空気がある。白人っぽさというより、アメリカ南部を彷彿とさせる泥臭さがあるって評判だ」
与太郎
「へぇ〜デンマークでやるBBQって感じっスね」
ご隠居
「例えが雑だけど、方向性は悪くない。あと面白いのはな、使い古されたリズムパターンを、ほんの少しアレンジして“自分たちの色”にしてるって点だ」
与太郎
「あ〜、トールちゃんが火を吹くときも、ちょっと角度つけるだけで攻撃力倍増ってやつッスね!」
ご隠居
「(無視して)そんでな、全体としてはバランスの取れた“カユいところに手が届く”アルバムとも言われてる」
与太郎
「なんか“メイド喫茶で出てきたおしぼり”みたいな感想ッスね……」
ご隠居
「だが、初期のパワーメタル的アプローチが好きな連中には“ちょっと洗練されすぎ”と感じるかもしれん。確かに、装飾音が多くて派手さは抑え気味だが、そこに深みもある」
与太郎
「あれスね、“昔はとんがってたけど、今は家庭持って落ち着いた”みたいな?」
ご隠居
「それでもな、ロニー・アトキンスの声が乗れば、全部PRETTY MAIDSになるってぐらい、あの人の声には重みがある。しかもその声でポップな曲まで歌いこなしてしまう」
与太郎
「⑩っスね!あれ、ICONの捨て曲って噂されてますけど、オレ的には“気を抜いてる顔が好き”みたいなトールちゃんのオフショット感あって嫌いじゃないッス!」
ご隠居
「……もう何でもアニメで例えるな。あとは⑧が“イングヴェイ的”と言われてる。ギターソロに流麗さと様式美がある。⑨はDEEP PURPLEの“Dead or Alive”と同名だけど、全く違う曲だ」
与太郎
「そっか、曲名で釣ってくるタイプのやつっスね。でもそれで勝負できるのがすごい!」
ご隠居
「⑤にはイアン・ペイスがドラムで参加、⑫にはロジャー・グローヴァーもゲストで出てる。だから“見えない紫の影”が全編に漂ってるんだよ」
与太郎
「えっ……じゃあこれ、ルコアさんがプロデュースしたメイドメタルってことッスか!?(興奮)」
ご隠居
「……」
与太郎
「そかそか、ご隠居。このアルバム、“どこか一曲が名曲”っていうより、“全部がちゃんとしてる”って感じっスよね。」
ご隠居
「それが“ジャンプ・ザ・ガン”の魅力だな。ちなみに“Jump the Gun”、つまりスタートの合図より先に走り出すこと。つまり“フライング”ってやつだ」
与太郎
「俺は、イントロも聞かずにダイブするタイプです」