【HM/HR研究会】『Eclipse』by YNGWIE MALMSTEEN
- 与太郎
- 「ご隠居〜い!今日は言いたいことがありすぎて、口からあれが飛び出そうッス!」
- ご隠居
- 「おう、そりゃあ見ものだ。で、どうしたんだい、今度は町内会の盆踊りで“爆音クラスト大会”でも企んでんのか?」
- 与太郎
- 「違うんスよ。オレ、昨日ね、言われたんスよ。“ハードロックを聴かない奴にロックは語れない”って!」
- ご隠居
- 「ほぉ、そりゃまぁ正論っぽいが、お前の耳には毒だったろうな」
- 与太郎
- 毒じゃなくて、興味っス。そんで、例の“ピロピロの帝王”、イングヴェイ?あれを初めてちゃんと聴いてみたんス。『エクリプス』ってやつ!」
- ご隠居
- 「おお、そりゃ感心だ。『ECLIPSE』な。1990年の作品で、全員スウェーデン人。自分でプロデュースもしてる、いわば“自己責任アルバム”だな」
- 与太郎
- 「でね、ご隠居。ボーカルがさ、なんつーか、“上手いのか下手なのか分かんない”ってヤツで…」
- ご隠居
- 「あぁ、ゲラン・エドマン。あれは確かに“印象がないことが個性”ってタイプだな。キレもクセも少ねぇから、良くも悪くも“消え方がうまい”」
- 与太郎
- 「そうそう!オレ、思ったんス。“ライドン兄貴だったら絶対ぶっ壊してくるな”って!」
- ご隠居
- 「出たな、ジョン・ライドン。あの世代のパンクの中でも、いまだに“誰も信用してない顔”してるやつだろ」
- 与太郎
- 「そうッス!あの目ヂカラと毒舌!あんなのがECLIPSEで歌ってたら、ギターの流麗さと真逆で最高だったのに…」
- ご隠居
- 「いや、それはもう事故だよ。交差点に新幹線が突っ込んでくるレベルのミスマッチだ」
- 与太郎
- 「でも…ご隠居。“ECLIPSE”の4曲目は正直ヤバかったっス。あれはオレでも分かった。“様式美って、こういうもんなんスね!”って…」
- ご隠居
- 「ほぉ、あの曲にやられたか。“構築された衝動”ってやつさ。即興っぽく聴こえて、実はめちゃくちゃ設計されてる」
- 与太郎
- 「あのギターの流れ、空間の切り方…え、これ…ライドンの“叫び”とは真逆だけど、これはこれでエグいなって」
- ご隠居
- 「おぉ、こっちの水にも慣れてきたな。で、他の曲はどうだった?」
- 与太郎
- 「2曲目は黒っぽくてさ、ジミヘンみたいだったッス!」
- ご隠居
- そうなんだよ、ジミヘンの魂をちょっと覗かせる瞬間があってな。イングヴェイもあれくらい“うねる”ようになってから、魂が入ってきたんだよ」
- 与太郎
- 「で、オレ思ったんス。速いだけじゃないんスね、ギターって」
- ご隠居
- 「“速さ”だけなら誰でも練習すりゃ出せる。でも“間”と“押し引き”には、その人間の生きざまが出るんだよ。特にインストの11曲目、聴いたろ?」
- 与太郎
- 「聴いたッス…オレ…何もしゃべれなくなったッス…。歌詞もないのに、何かが胸にきたんス…あれ、ライドン兄貴でもできねぇ…」
- ご隠居
- 「ほぉ、ずいぶん素直だな」
- 与太郎
- 「いや…ライドン兄貴は言葉でぶん殴ってくるじゃないスか。でもイングヴェイは音だけでズシンとくる。“殴らない暴力”って感じっス」
- ご隠居
- 「そう、それが“様式美の説得力”ってやつだ。丁寧に作りこんで、逆に“生々しい”んだよ」
- 与太郎
- 「……ご隠居、オレ、パンクだけじゃダメっスね。“いいもんは、いい”って言える耳になりたいッス」
- ご隠居
- 「それがいちばん難しくて、いちばん大事なことだよ。型破りも、型があるから破れるんだ。お前さんもようやく、それが見えかけてきたようだな」
- 与太郎
- 「でもやっぱ最後は、ライドン兄貴の目ヂカラに戻っちゃうんスけどね!」
- ご隠居
- 「まぁいいさ、パンクも様式も、どっちも“魂の叫び”だ。お前さんの耳に残ったもんが、いちばんの真実ってことだ」
- 与太郎
- 「よっしゃ、ご隠居!オレ、今日から様式美、全曲2倍速で聴くッス!」
- ご隠居
- 「……それじゃクラストコアだよ、バカ」